陥入爪は、爪の食い込みが炎症を起こし、時に肉芽(にくげ)という、傷が治る過程でできあがる皮膚の新しい組織を形成することがあります。
傷の治りが悪いと、状態がさらに悪化して化膿したり、皮膚が正常に改善せず、肉芽がむくんだ状態となったりします。場合によっては肉芽を取る治療をおこなわなくてはなりません。
肉芽を取る方法としては、「病院で肉芽の治療をする」「セルフケアで肉芽を改善する」という2つの方法があります。
この記事では、病院での肉芽治療の内容と市販薬の軟膏や保存療法による肉芽の改善方法について詳しく解説します。また、キズパワーパッドをはじめとするハイドロコロイド絆創膏の使用の是非についても回答しています。
この記事の監修者:
巻き爪フットケア東千田町院 院長 文田 早織(ペディグラス認定メディカルトレーナー、同認定足爪補正士・鍼灸師)
もくじ
陥入爪で肉芽ができる原因
陥入爪は、爪の端が周りの皮膚に食い込んで炎症を起こしている状態です。腫れや痛みの症状をきたすことが多く、爪が食い込んでいる箇所に「肉芽(にくげ)」を形成するケースもよく見られます。
この肉芽ができる原因ですが、人間の皮膚は傷ができると細胞を増殖させ、傷口を治そうとします。
増殖した細胞は「肉芽組織」と呼ばれ、肉芽組織は通常「健康肉芽」としてきれいに傷を治していきます。
しかし、傷口の腫れや炎症が長引くと、健康肉芽ではなく「不良肉芽」という治りの悪い肉芽を形成します。症状によっては、不良肉芽の切除が必要となる場合があるでしょう。
陥入爪も炎症が進行すると傷から細菌感染を起こし、不良肉芽を形成したり、化膿したりと悪化の状態をたどります。
参考文献:
青木 文彦,陥入爪・巻き爪の違いと治療-この似て非なるものー,日本フットケア学会雑誌,16(4),200-207,2018
MSDマニュアルプロフェッショナル版/陥入爪(爪甲陥入症)
陥入爪の肉芽を取るにはどうすればよいか?
病院を受診する
陥入爪の肉芽を取る方法としては大きく2つの手段があります。
まずは病院を受診し、肉芽の治療を受ける方法です。
病院で治療をすると、医師の判断のもと症状に合った治療が受けられ、安全性の確保や症状の改善が早いなどのメリットがあります。
巻き爪や陥入爪は主に皮膚科や形成外科で治療をおこなっています。
しかし、すべての病院で対応しているわけではありません。治療可能な病院をWebサイト等で事前に確認してから受診するとスムーズでしょう。
セルフケアをおこなう
2つめは、セルフケアによる方法です。
陥入爪の保存療法や、肉芽への対症療法として市販薬の軟膏を用いた症状の緩和をおこないます。
なお、化膿や出血の症状を伴う場合は、病院での治療が必要です。自己判断でセルフケアを進めないようにご注意ください。
病院で陥入爪の肉芽を取る方法
病院で実施される陥入爪の肉芽への治療法として、液体窒素による冷凍凝固療法、外用薬や内服薬の処方、陥入爪の手術などが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
液体窒素による冷凍凝固療法
冷凍凝固療法は、マイナス196度の液体窒素を使って肉芽部分を凍らせ、固まらせてから除去する方法です。
外来で実施しやすく、他の保存療法や手術より安価です。
短期間で症状を取り除くため、仕事や生活への支障が出にくいというメリットがあります。また、妊娠中でも処置が可能です。
一方、海外の研究によると、12~16歳の若年者で冷凍凝固療法の治療を受けた方のうち、約半数が再発したという報告があります。
冷凍凝固療法単体で肉芽を根治できるとは言い切れず、他の治療と組み合わせることで、より効果が期待できる治療方法といえるでしょう。
参考文献:
小野木 晃,大谷 道廣,疣贅の液体窒素による凍結療法,皮膚,第20巻,422-423,1978
上田 尚樹,疣贅の液体窒素による凍結療法,精密工学会誌,vol.81,No.4,308-311,2015
Çağrı Turan,Nurcan Metin,Assessment of Ingrown Toenails Treated with Nail Fold Cryotherapy in Adolescent Patients: An Observational Pilot Study,Journal of the American Podiatric Medical Association,Volume 114,Issue 1,2024
外用薬と内服薬の処方
病院によっては、医薬品を用いて爪の周りにある肉芽の炎症を抑える治療をおこないます。
処方される主な医薬品は、抗生物質やステロイドを配合した外用薬(ゲンタシン軟膏など)と抗生物質の内服薬です。
この2つを併用することで、肉芽部分の炎症を緩和していきます。
なお、炎症が悪化して膿が溜まっている場合は、皮膚の切開によって膿をだす処置がされるケースもあるでしょう。
参考文献:
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 情報検索/ゲンタシン軟膏0.1%
陥入爪の手術(保険適用の治療)
病院で保険適用になる陥入爪の主な治療は、肉芽を治療するための液体窒素冷凍凝固療法や医薬品の処方のほかに、手術療法があります。
手術療法は、陥入爪の根本原因にアプローチするために爪を切除してしまうものです。
フェノール法と呼ばれる、爪の根元の爪母(爪を作り出す組織)から爪を切除し、薬品を使って爪を生えなくする手術や、楔状(けつじょう)切除法という肉芽と食い込んだ爪の端をクサビ形に切り取る手術が適用されます。
- 短期間での治療を希望される方
- 保存療法や矯正治療で効果がない方
- 再発を繰り返している方
以上の方に対して手術がおこなわれ、再発が少ない点がメリットですが、麻酔が切れると痛みが出る、術後は爪の幅が細くなるといった大きなデメリットもあります。
参考文献:
日隈 康雄,矢野 寛一,嶋田 直宏,針 秀太,フェノール法による陥入爪の治療経験,整形外科と災害外科,49巻,2号,564-568,2000
保険適用外の陥入爪矯正治療
なお、保険適用外の自費による陥入爪の矯正治療もあります。
病院での矯正治療は、ワイヤー法が適用されるケースが多いでしょう。
ワイヤー法は、爪の先端左右に小さな穴を開け、強い弾力性のあるワイヤーを通し、爪の両端を上部に引っ張り上げて食い込んだ爪を矯正します。
ワイヤー法は爪を切り取る必要がないため痛みはありませんが、弱点として爪の先にしかアプローチができず、治療をやめると再発するおそれがあります。また、矯正期間はワイヤーを装着し続けるため、見た目の問題や靴下に引っかかりやすいという不便な点もマイナスポイントです。
このように、根本改善にいたらない可能性があるため、ワイヤー法による治療を受ける場合は、医師への十分な確認が必要でしょう。
セルフケアで肉芽を取る方法とその効果
陥入爪や肉芽へのセルフケアとして、抗生物質入り市販外用薬の使用、コットンパッキング法、アンカーテーピング法などがあります。
セルフケアはごく軽度の症状であれば改善が見込まれますが、強い痛み、化膿や出血を起こした肉芽がある場合は、かえって症状を悪化させるデメリットもあります。
市販の抗生物質入り外用薬を用いる
市販の外用薬を用いてセルフケアをおこなう際は、抗菌作用のある抗生物質と抗炎症作用のあるステロイドが配合された軟膏を患部に塗布します。
陥入爪の肉芽に対応する主な市販薬を以下に紹介しましょう。
◆ドルマイシン軟膏(第2類医薬品・ゼリア新薬工業)
※画像引用元:ドルマイシン軟膏(第2類医薬品) ドルマイコーチ軟膏(第②類医薬品):ゼリア新薬
◆フルコートf(指定第2類医薬品・田辺三菱製薬)
※画像引用元:フルコートf|田辺三菱製薬
◆ドルマイコーチ軟膏(指定第2類医薬品・ゼリア新薬工業)
※画像引用元:ドルマイシン軟膏(第2類医薬品) ドルマイコーチ軟膏(第②類医薬品):ゼリア新薬
◆テラ・コートリル軟膏a(指定第2類医薬品・JNTLコンシューマーヘルス)
※画像引用元:テラ・コートリル軟膏aの特徴・効能 | 健康サイトbyアリナミン製薬
なお、抗生物質やステロイドは、市販薬であっても副作用を起こしやすい強い成分です。
抗生物質をむやみに使用すると薬に耐性を持つ菌が発生したり、ステロイドを長期間連続して使用すると、皮膚が薄くなったり、免疫を低下させ皮膚感染症のリスクを増加させるおそれがあります。
参考文献:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索
ドルマイシン軟膏
フルコートf
ドルマイコーチ軟膏
テラ・コートリル軟膏a
市販薬のリンデロン軟膏は抗生物質が入っていない
インターネット上では、「市販薬のリンデロン軟膏が陥入爪の肉芽に効く」という話題も拡散されています。
しかし、市販薬のリンデロン軟膏(リンデロンVs・シオノギヘルスケア)には、抗生物質が配合されておらず、ステロイドのみが主成分の軟膏となります。
抗生物質とステロイド双方が配合された軟膏は、医療用医薬品の「リンデロン-VG」であり、医師の処方がなければ購入できません。
どの軟膏を使用すればよいか判断に迷った時は、病院を受診し、適切な外用薬を処方してもらうのが望ましいでしょう。
参考文献:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索/医療用医薬品 情報検索
リンデロンVs軟膏
リンデロン−VG軟膏0.12%
コットンパッキングなど保存療法を試す
軽度の陥入爪や肉芽の状態で、痛みが少ない場合、コットンパッキングやアンカーテーピング法などでセルフケアする方法があります。
コットンパッキングは爪と皮膚の間に、コットンや不織布をはさみこんで、食い込みを和らげる方法です。コットンパッキングを繰り返していると、次第に爪と皮膚の隙間が広がり、圧迫が緩和されていきます。
アンカーテーピング法は、爪のキワから指にかけてテープを巻く方法で、伸縮性のある医療用テープを使います。テープで皮膚を引っ張り、爪と皮膚の間に隙間をつくり出すことで、食い込みを緩和させます。
▶関連記事:コットンパッキング・テーピングで陥入爪のケアをする方法
キズパワーパッドを使うのはNG
陥入爪の肉芽は「爪の食い込みによる傷」なのだから、キズパワーパッドを貼ってもよいのでは?と考える方もいらっしゃるでしょう。
キズパワーパッドをはじめとする「ハイドロコロイド絆創膏」は、一般的に自然治癒力を高める湿潤療法として使用されます。
傷を乾燥から守り、体液(滲出液)の成分によって治していくのが特徴ですが、傷の状態によっては、症状を悪化させるデメリットも持ち合わせています。
陥入爪の肉芽はすでに炎症を起こしており、菌に感染している可能性も高い状態です。
菌が入り込んだ状態の傷にキズパワーパッドを使用すると、傷を密閉してしまい、菌を蔓延させてしまうおそれがあります。
また、パッドを剥がしたときに傷口が開いてしまうという悪影響もあります。
陥入爪の肉芽に対しては、キズパワーパッドを使わないようにしましょう。
参考文献:
一般社団法人 北海道薬剤師会 公式サイト/ガイダンス「傷のケア」
陥入爪の肉芽のセルフケアは推奨されない
勝手な自己判断で症状が悪化する
陥入爪の肉芽は炎症を起こしている状態であり、どのようなケアをすればよいのか、正確に自己判断するというのは大変難しい状況です。
勝手な自己判断による処置で、肉芽の痛みや炎症が悪化する可能性も考えられます。病院の受診を優先するように心がけましょう。
肉芽の再発を繰り返す
肉芽は病院で切除をおこなっても再発することがある厄介なものです。
セルフケアが逆に刺激となり、肉芽の再発を繰り返す原因にもなりかねません。
また、爪を切り取らずに陥入爪を改善したい場合は、先に肉芽の症状を抑える必要があるでしょう。まずは病院を受診し、適切な肉芽治療をおこなうことが推奨されます。
セルフケアは陥入爪予防の範囲にとどめる
安全なセルフケアは「陥入爪予防の範囲」といってもよいでしょう。
足の爪が皮膚に食い込む原因はさまざまありますが、以下の外的要因も大きく関係してきます。
- つま先に過剰な負荷がかかっている
- サイズの合わない靴を履いている
- 爪を切りすぎている(深爪)
そのため、予防法としては、
- 姿勢や歩行バランスの改善
- 指先を圧迫しない足に合う靴を選ぶ
- 爪を切りすぎない
以上が挙げられるでしょう。
また、爪周囲の傷や感染を予防するために、常に足を清潔に保ち、保湿することも大切です。
▶関連記事
巻き爪や陥入爪の予防について
巻き爪や陥入爪にならないための正しい爪切り
痛みなく陥入爪を治すにはどうしたらよいか?
痛みなく陥入爪を治したければ、爪を切らずに済む保険適用外の陥入爪補正がおすすめです。
特にプレート法は、施術時の痛みがほぼなく、補正中の見た目もきれいな状態が維持できます。
「ペディグラス」の陥入爪補正がおすすめ
プレート法のなかでも推奨されるのが「ペディグラス・テクノロジー」の陥入爪補正です。
プレートを装着するだけの施術で、短い爪にも対応。あらゆる爪のトラブルに適応できるのがペディグラスの利点といえるでしょう。
特許取得のプレート法で痛みが少ない施術
ペディグラスは、国内外で特許取得済みの補正プレートを使用します。
施術内容は、爪の症状に合わせたプレートを特殊技術で補正したい箇所に貼り付けるだけ。
爪を切り取ったり、しみる薬品を塗ったりすることもなく、施術時の痛みがほとんどないのが大きな特徴です。
また、プレートは透明仕様で装着しても目立たず、装着後の爪表面に凹凸が出ないため、靴下やストッキングをひっかける心配がないこともメリットです。
陥入爪の根本改善が目指せる
ペディグラスは爪の根本からのケアが可能なため、再発のリスクが低いという特性があります。
爪の側部を切るのではななく、皮膚に食い込んだ爪を持ち上げて、前に延びようとする爪本来の働きをサポートします。
従来の陥入爪ケアは爪先端の改善には長けていましたが、爪は根元から伸びてくるため、再発しやすいことが課題でした。ペディグラスは陥入爪の根本改善が目指せる、貴重な手段といえます。
ペディグラスで陥入爪を補正する際の注意点
あらゆる爪の症状に適応できるペディグラスですが、陥入爪を補正する際には以下の注意点があります。
ひどい炎症や化膿のある肉芽は先に病院で治療する
ひどい炎症・化膿・出血をともなう肉芽を併発した陥入爪は、ペディグラスのプレートが装着できないため、先に病院で肉芽を治療してからの施術対応となります。
施術者から病院受診を促された場合は、その指示に従いましょう。肉芽の治療後に改めて陥入爪の補正を進めていきます。
セラピストプラネットはペディグラスの陥入爪補正に対応
セラピストプラネットの巻き爪フットケア店は、ペディグラスの陥入爪補正に対応しています。
各店舗の施術スタッフは全員、ペディグラスの認定資格を保有。正しい技術でお客様が安心できる施術を実施します。
肉芽の状態が判断できない場合もご相談ください
ご自身で肉芽の状態に判断がつかず「病院へ行ったほうがよいの?」と迷ったときは、巻き爪フットケア東千田町院ほか、お近くのセラピストプラネット巻き爪フットケア店まで、お気軽にご相談ください。
カウンセリングのみの対応も可能ですので、お客様の陥入爪の状態を把握し、改善に向けて適切なアドバイスをおこないます。